私が3歳から6歳を過ごした家は、4軒が一続きのいわゆる『長屋』でした。
六畳一間の和室と、六畳の台所。
風呂もトイレも家の外の別棟にあり、4軒共同です。
風呂場の湯船は木製。
床は土間で、学校の靴箱の足元に置かれるような、木製のすのこが置かれていました。
床から浴槽の上までが高いので、子どもは親と一緒でなければお湯に入れません。
もちろんシャワーは無しです。
共同なので、入る時間は決められていました。
風呂はまだこれでもマシで、苦手なのはトイレ…いや、便所です。
便所は男の人が用を足す、大きな瓶を床に埋め込んだだけのものが一つと
その奥に、和式のポットン便所の個室が1つずつ。
和式の方は便器とほぼ同じ大きさの穴がぽっかり開いていて、底は真っ暗。
臭いし、とても怖いのです。
とても夜1人で行くなんてことはできません。
ある年、4軒のうちの1軒に若い夫婦と1歳くらいの赤ちゃんが越してきました。
しばらく経つと、赤ちゃんがヨチヨチ歩くようになってきました。
その頃はまだ弟も乳飲み子で親もそちらにかかりっきり。
もう少し赤ちゃんが大きくなったら、一緒に遊べるかな…?
と思っていたのですが。
ある日、幼稚園から帰ってきて、用を足しに行くと異様な光景が広がっていました。
男性用の瓶が埋まった小便器の方に、スナック菓子が散乱しているのです。
何だか怖くなって、家に戻り、弟に添い寝している母親に
「お母さん、便所どうなったの。
お菓子一杯落ちてる」
と聞くと、母親は渋い顔をして
「◯◯さんのとこの子が便所に落ちただわ。
あんた便所行く?連れてくか?」
と答え、怖かった私は、昼間ですが母親に付き添ってもらい、便所に行きました。
便所から戻るとき、母親に赤ちゃんはどうなったか聞くと
「すぐ病院に連れて行ったみたいだで、あんたは気にせんでええわ」
と、すげなくされ、こちらもそれ以上は聞くのがためらわれているうちに
気が付いたら赤ちゃんの家は引っ越していました。
のちに私が小学1年の夏休み、父親が会社員になり社宅に引っ越すことになります。
そこは鉄筋の建物で、お風呂は水色のホーロー製、トイレは和式ながらも水洗でした。
「すごい!天国!」
そう喜んだものの、学校では小学4年まではポットン便所。
5年になって水洗になったと思ったら、中学でまたポットン。
中3になるまで、完全にポットン便所から開放される日は来ませんでした。
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